3ヶ国目 キルギスタン前編 ~地球散歩~
モンゴル ウランバートル空港11:05発。
洗濯物がまだ乾いてないタクシーは呼ばないとない空港行きの市街バスはない。そんなこんなで慌てて出発するとたいてい失敗することをなぜ知ってて繰り返してしまうのだろうか。洗濯バサミと、薄手のパーカーを入れる袋を置いてきてしまった。結局空港方面の市街バスを市民の助けをもとに発見し無事飛行機には間に合ったのだが、自我の奥底に根強く育ったこの"結局なんとかなっちゃうんだろう精神"は治したほうがいいのか否か。
否!ていうか治そうとしても永久に治らないね
中国領空およそ1万メートル(てきとう)をゆくトルコ航空機内で、はじめてPassengersって映画観た。泣いた。隣の人にばれないように。おもしろい映画です観てない方ぜひ。
りんご1ヶ値切っても100ソムすんの?高ぇなぁ〜でも今食べたいからいっか。購入。
→結果5ヶで100ソム(≒160円)だった。ここキルギスタンの首都ビシュケクのバザールでの買い物はハプニングの連続だ。なんせロシア語とキルギス語しか皆話さない。
キルギスの第一印象はあまり良くない。空港のタクシードライバーに余計なエネルギーを消費したからだ。
到着ゲートを出た途端に来日したハリウッドスターばりの人気者になる。どのオッサンも自分のタクシーに乗せようと必死だ。ATMで現地通貨を引き出したあと、ひとりのあんちゃんと交渉を開始する。
自分「マップのここの住所に行きたいんだけどいくらよ」
あんちゃん「800ソムだ」
自分「500しか出せないね」
あんちゃん「700でいいよ」
自分「他当たるわ」(歩き出す)
あんちゃん「わかった500で連れてってやる」
自分「500な、オーケー」
他ドライバー「まて、おれは400だ」
自分「こっちにするわ」
あんちゃん「300!」
自分「絶対だな、300ね」
他ドライバー「200で行こう!」自分(無視)
しかしこの後走行中に、1000だと言い出し、さらに自分のボスに100払う用事があると言って軽く遠回りされる。ちょっと怒鳴ってみた。Hey!今passengerが乗ってんだぞっつって。結局500ソム(≒800円)で決着。この距離の相場が600~700らしいからまぁ良しとするけど、、こんなのこれから腐るほどあるんだろうなぁ。受けて立とう!かかってこいや!
他の旅人のブログを覗いてみると、どうやらこの街はタイやインド同様「沈没」の危険があるらしい。沈没とは今まで旅して周ってきたのに居心地が良すぎるのか安宿にずっと居続けること。たしかにバスとか買い物とか物価は安いしメシはうまいし治安もいい。なんでも、有名な日本人宿があってそこに日本人が集い、一緒にキャンキャンするんだとか。絶対楽しいよね。
でもこちとらここキルギスでものすごく立派な家に滞在している。姉ちゃんの昔からの友だち、すみれさんがキルギスに住みながら働いていてそこにお邪魔させてもらってるのだ。タダで!いろいろメシも作ってくれるし情報もくれるしなんたる待遇!ありがたやありがたや。
ロシア語を勉強してるとのことで、ロシア人講師のナアナ?先生が予告なく食材を持ってきて急遽ボルシチ作りに挑戦したり。ロシア滞在中に口にしたロシアっぽいものといったらウォッカくらいだけだったから残念に思ってたのでなんたる強運。うまし。まるでスコールのような超陽気な先生の無料ロシア語&料理レッスン。巡り合わせおもろー
すみれさんはキルギスの羊毛フェルトで作られた100%ハンドメイドスリッパに関するプロジェクトに携わり世に広めるべく仕事している。着いたその日にすみれさんの仕事仲間マイコさんとその彼氏シャウハット(愛称 ショーマ; キルギス人)がすみれさん宅で晩メシを食らうとのことで、そこに誘われて顔を合わせた。なにを隠そうこのショーマが若干27歳にしてそのプロジェクトで実際にスリッパを作る会社を束ねるザ・ボスというから驚き。英語絶賛勉強中の茶目っ気たっぷりマンとすぐ打ち解けた。
バザールで買い物するショーマ
そして流れるように200キロちかく離れたイシククル湖という雄大な湖のそばにある、自宅兼工場のあるタムチという彼の故郷の村にすぐお邪魔することが決定した。ショーマと2人で彼の車で。僕の予定はいつも斜め上から突然降ってくる。
国際免許を持ってるのにも関わらずすみれさん宅に置いてきたので、キルギスで晴れて無免許運転デビューを飾った。
左ハンドル右車線は7年前ぐらいにハワイで乗った時ぶり。警察だスピードダウン!とショーマ。ヤツらを出し抜いた車内でスピードを再び上げながらハイタッチするおバカ加減が楽しかった。
村の生活に入り込み、同じものを食べ、実際のスリッパ作りを体験した旅人はそう多くはいないだろうと思う。老若男女様々な人が仕事や家事を分担していた。女性陣がメシを用意したりスリッパの型を作ったり。男性陣が得た羊毛を精製したり、できあがった土台のスリッパをひたすら洗ったり。仕事と生活が折り重なっててまるでひとつの大きな家族のよう。普段見慣れぬ言葉の通じない他所者にみんな優しくしてくれた、ダニエル、エーラ、パーシャ、ミライダ、えーと他の皆さんありがとう!
ゴシゴシ洗うことでどんどん繊維同士が結びついて頑丈になりサイズが縮んでいくのだがこの作業が本当に大変。手間暇かけて愛情ギャンギャンかけてひとつひとつ作られてできるスリッパは今や日本だけでなくヨーロッパやアメリカなどに輸出してるそう。すごいじゃんショーマ!やるじゃんショーマ!
そんなショーマとイシククル湖でボートに乗って水に飛び込んだ。
肉とビールの美味い店に行った。
彼の親戚の家に行って伝統料理を食べた。
山を流れる川の上流で釣りをした。
いろんなところに連れてってくれた体験させてくれた。
1時間に1回はおそらく仕事の電話がかかってくる彼に、「忙しいのに色々してくれて悪いねぇ。大丈夫なのかい?」と聞くと彼はこう答えた。
「大丈夫だ。なぜなら俺はボスだからな!」
(拙い英語で)
かっけぇショーマ!
そんな彼はスリッパ洗ってる時、湖飛び込んでる時、山で1匹も釣れなかった時、しきりに「interesting?interesting?」と聞いてきた。きっと退屈させてないか心配だったのだろう。んなわけないじゃんショーマ!キルギスでの最大の思い出になってるよ!茶目っ気たっぷりのショーマは思いやりも兼ね備えた本当にナイスガイだ。
うちの両親も喜んで使ってますキルギススリッパ。興味ある人は連絡してくれればなんかこういい具合につなげられると思いますのでぜひ。
ショーマの村タムチからの戻りはヒッチハイクを決行。といってもここでは割とメジャーな交通手段らしい。お金も交渉して払うかんじ。あれ、世界共通のヒッチハイクってどうなんだろ。タダが普通だと思ってたけど場所によるのかな。
なんとか捕まえて乗り込むも途中じゃり道走行中突如ストップ。車体下のタンクからガソリンがててててててんっと垂れてる。
「ここまでだ!」
おいまじかよ!ビシュケクへ早く着かないと。10時にウズベキスタン大使館行かなきゃいけないのに。
ダッシュしてなんとかタクシーを拾いウズベキスタン大使館に到着、したはいいものの実は必要な書類が1枚抜けていることにすでに気付いていた。まぁその場で書いたりしてなんとかなるだろうと思いつつこりゃ出直しだなと薄々、いや脳みその80%を占める割合で感じていた。そういう予感は大抵的中する。
さてどうするか。
ウズベキスタンにはVISAがないと入れない。抜けている書類はPCで情報を入力しプリントアウトする必要がある。看板も言葉もさっぱりわからないこの街でそれは旅人ビギナーの自分にとって至難の業だった。
……………………‼︎
大きなホテルに行けばPC借りたり手助けしてくれたり英語が伝わるのではないか。
ホテルで働いていた経験が少なからず生きたにちがいない。その思惑は見事に功を奏し、書類を揃えることができた。本当ありがとうゴールデンなんとかホテル。アゼルバイジャンVISAの書類も揃えた。
アゼルバイジャン?おそらくキリンチャレンジカップでしか聞いたことがないような印象だろう。考えに考え抜いた挙句、行く予定は『今も』ないアゼルバイジャンのVISAを取ることにしたのだ。理由はいつか触れたいと思う。べつにご覧の皆さんの興味がなくても書こうと思う。
じつはヒマな今日この頃。
キルギスにはウズベクやアゼルのVISA申請のために1週間以上居座ることになるのだが、時間を持て余しているのである。来て早々にショーマと、キルギス来たら行くべきイシククル湖や貴重なフェルト体験をさせてもらったので、最大の盛り上がりが終わってしまった感があるのだ。
ここでゲストハウスなんかに泊まっていたらひとり旅ならではの旅人同士の交流があるだろうが、それがない。タダで超快適な部屋に泊めさせてもらっておまえ何言ってんだと、それはおっしゃる通りなのだが、色んな種類の滞在方法がこの世にはあって、それぞれにメリットデメリットがその人それぞれにあるんだなぁと感じる。もちろんすみれさんは仕事をしてるのだから忙しいし、なんでもかんでも頼っては忍びないしそれではつまらない。
さて、キルギスを退屈と思わないように、何か新しい事に飛び込んでみよう。
なんせこんなにも緑が多くてのびのびとした国なのだから。
朝玄関を開けエレベーターが止まってたので階段を下りる。バッグをゴソゴソする。ゴッガッガチャ。gopro5落ちる。電源入れてみる。液晶がバグってる。
一瞬にして顔が青ざめる。
おいまじかよほんとに?壊れたん?3カ国目にしてもう壊れたん?うそでしょどうしよう買わなきゃいけないのかなぁキルギスでgopro売ってんのかなぁあっ直せるかなどうなんだろキルギスにしばらく滞在するっていうのはこういうことなの?えーちょっとほんとにまじかようそでしょーーーーーー
放心状態になりながらバッテリーと本体を子猫を撫でるかのように愛くるしく掌に収めること10分。赤信号の間際に、もう一度電源を入れてみる。
あれ、すべて元に戻ってる……どこもなにも壊れてない。
電子機器もさ、愛情注げば直ったりするんだね。
うおーーーーーーーーーーーーよかった‼︎‼︎‼︎
そん時のリアルな安堵の表情
その勢いで威勢良くウズベク大使館の2度目の訪問。ピンポーン!とインターホンを押す。
「あなたは明日の10時でしょ。今日は無理よ。」
は?
そんなの知ってるよ確かに昨日電話した時そう聞いたよでも今日行けばもしかしてやってくれんじゃねぇかと思ったんだよ今日してくれたら明日はアゼルのほうに行けて都合いいんだよ
まったく大使館をナメすぎである。