22ヶ国目 ポルトガル~地球散歩~
夜11時ごろ、この日の目的地、ポルトガル第2の街ポルトの中心地からほど近い宿にパトカーの後部座席に乗って到着した。
遡る事6時間前、スペインの街サラマンカにてヒッチハイクをほぼ完全に諦めかけていたその時、2人のポルトガル人が乗った車が停まった。サラマンカ在住のリュウさんオススメのポイントで1時間、自分の思う最適ポイント、ハイウェイ手前のガソリンスタンド付近まで1時間歩いてそこで2時間。強い日差し、予想に反して多くない交通量に根拠のない自信が薄れていく矢先だった。
なんでヒッチハイクしていたかというと、40€(≒5,300円)というサラマンカ〜ポルト間のバスの値段が無性に気に食わず、こんなん払っとる場合か!とまぁ要するにただのアホである。
27歳のフイミラーと28歳のブルナルド。なんと2時間前に一度ヒッチハイクしてる様子を見かけ、たまたま同じ道路を通ったらまだやってたので停めたとの事だった。
彼らはオリーブをオイルなどに加工してそれを売る仕事をしている。彼らが説明してくれた通り、国境付近からオリーブの樹がそこらじゅうに成っていた。しかし雨が全然降らず熱波が猛威を振るい、空気が乾燥し、彼らの仕事はもちろん暮らしにも良からぬ影響が出ているとのこと。現にドライブ中に山火事を2ヶ所も目撃した。今年6月には多数の死者を出す山火事が起きた程に、事態は深刻だ。
そんな彼らの住まいはポルトからおよそ150キロ離れたミランデラという小さい街。そこまで連れてってもらって、そこから10€(ガッツポーズ)でポルト行きのバスが出てるのでそれに乗る事に。
バスまでの1時間弱を一緒に待ってくれるという2人の優しさに甘え、カフェに入ると彼らの友達がいた。少し談笑したのち、なんとその友達のうちの1人の年配のおっちゃんジョンが、これから車でポルトに帰るから乗せてってくれるという。ジョンはかなり独特の空気感と癖のある英語のアクセントの持ち主で、150キロの2人きりのドライブに少し抵抗を感じたが、絶対悪い人ではなさそうだし何より10€浮く!ので即決。ジョンはサンドイッチと飲み物、洋菓子をごちそうしてくれた後、ポルトまでぶっ飛ばした。
そう、めちゃめちゃぶっ飛ばした。
予測不能な急アクセル急ブレーキ
幹線道路で爆走してたかと思えば、ガールフレンド(!?)やら家族やらと電話するために急に減速しながらポルトガル語で通話。
久々に死をイメージした。
あと30キロほど来たところで、路肩のスペースに急停車。こっちは早くポルトに着いてほしかったが、さすが乗せてもらっておこがましいので小休憩に付き合った。
車と少し離れたところでボケーっとしてたら突然1台のパトカーがすぐジョンの車の隣りに停車。
あー職質かなんかかなー
警官と会話してるジョンのボルテージが少し上がっている
あースピード違反かなー
そりゃしょーがないよアンタあんだけ出してりゃ。俺は一銭も負担せんぞー
「おまえもちょっとこっち来い」と手招きされ、入国審査のような質問と荷物チェック、パスポートをホールドされ、ここにいる経緯を説明させられる。
「この人(ジョン)とはどういう関係?」
→数時間前に初めて会いました
「なんで知り合ったの?」
→サラマンカでヒッチハイクしてそれから…
「なにかおかしな事とかなかったか?」
→なにも!彼はいいヤツさ
そして長いことジョンと警官が口論している。スピード違反にジョンが反論してるのか?明らかに彼はヒートアップしている。ポルトガル語で訳がわからなかったから、何が問題なんだ、と割って入ってもちょっと待ってろとしか答えてくれない。
「君はここからタクシーで宿に行きたいか、それともこの男に引き続き送ってもらいたいか?」
もちろんジョンさ、早く向かわせてくれ疲れてるんだ!と答えたもののどうやらスピード違反ではなさそうである。ジョンを危険視しているのか…?
だいぶ経ってから結局、「テペイ、君はこれからパトカーに乗ってオフィスで簡単な書類を書き、問題がなければ5分で終わるからその後宿に送ってもらう。それでもいいかい?」とジョンの口から告げられ、「OK(少しワクワク)」と即答した。もはや長い話が終わるならなんでもよかった。
ポルトまで30キロを残し、ジョンに別れを告げる。そしてパトカーの中で、衝撃の事実を告げられた。
「今だから本当のことを言うと、パトカーを呼んだのは実はあの男(ジョン)なんだ」
「ジョンは見知らぬ外人を乗せて走っている状況に恐れを抱いたんだ」
「………⁉︎ でも最初に誘ってくれたのはジョンだよ⁉︎」
走っているうちに気持ちが変わっていった、ということなのか。しかしそれならなんであんなに長い時間口論し続けていたんだろうか。
「ところが我々と話しているうちに、また君に興味をもったらしい。最後まで送らせてくれと頼まれたが、君のより安全な方法を我々は選択した」
「実際彼は危ない男ではないし、君も書類を提出する必要はない。これは本当に珍しいクレイジーな出来事だよ」
まったく色んな事が起きるもんだ。
人生で初めて乗ったパトカー。ポルトガルのパトカーはTOYOTAだった。TOYOTAすごい。色々話して和気あいあいとなった警官を翌日飲みに誘ったが残念ながら仕事だった。
宿のおばちゃんが心配そうな顔で温かく迎えてくれた。
翌日、フイミラーとブルナルドにおすすめされたフランセジーニャとやらを街中で見つけたので訳もわからず頼んでみた。
ベーコン、ハム、豚ロース?、チーズを厚切りトーストで挟み、目玉焼きを乗っけて最後にビーフシチューみたいなスープをぶっかけるという、社会人2年目1人暮らしの買い物行くのが面倒な若者が家にある食材を全て駆使し最後に前日親が訪問して作ってくれたビーフシチューの残りをぶっかけたかのような豪快かつ大胆なポルトのソウルフードである。
味は見た目通り。普通にうまい。ややしつこい。そしてボリューミー。
ロナウドもこれを食ってでっかくなったのかな
ポルトは坂道や階段が多く、思わぬ景色に遭遇するのが楽しい街だった。
首都リスボンでも起伏のある街並みは変わらず。バリアフリーどうのこうのよりも最初から坂や階段が多いところで住み続けてたら足腰も衰え知らず!な老人ばかりになるのだろうかと考えてみたり。いや全員が全員そうはならんだろうなぁ階段が苦しくなったら別の場所に移動せざるを得ないのだろうかはたして。
有名なお店のリスボンならではのエッグタルトはパリふわとろ。
あっれここスイスだっけかと錯覚しそうになるほどスイス代表ユニフォームを着た人をたくさん見かけた。ユニフォーム着て、旗を掲げ、チャントを吠えながら酒を飲み。最高に楽しそう……
もしかして…と聞いてみる
そうなんとW杯欧州最終予選1位スイスと2位ポルトガルの直接対決がこの日この場所であるという‼︎‼︎
これを見ず何を見る
これは間違いなく天の導きだ
街の人の言う通り、チケットを買うためすぐさまスタジアムへ。
「全席ソルドアウトです」
それから先のことは覚えていない。
何もやる気が起きず覚えるに値しない時間を過ごした、という事だけは実感がある。
スペインに戻るバスのチケットを45€で何の抵抗もなく買った。